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夏目漱石・中村不折・明治38年10月
先々月(7月)のなかごろ、例によって古書会館に行って物色していたところ、茶色い本の山の上に、博文館発行の「当用日記」があるのに気付き、手に取ってみた。
明治38年の当用日記
明治38年(1905)のもので、8割くらい書き込まれている。読み難そうな筆文字だったけれど、値段が1,000円という格安なこともあって、まァ、とりあえず買っておきましょうか、と購入に及んだ次第。
日露戦争2年目の日記で、日記の主は横浜在住らしく、戦争関連記事も少なくない。
しかし、この日記の記事で、今のところ、もっとも興味深いのは、10月8日(日曜日)の記事だ。
明治38年の当用日記(10月8日)
読み難い字です。個人の日記なのだから、まァ仕方がない。
本文3行目の下から5文字目あたりから注目してください。14文字ばかり翻字してみます。

…更ニ夏目漱石 中村不折 両氏を尋ね…


この日記の主、夏目漱石と中村不折を立て続けに訪問している。
時に、明治38年10月です。この訪問の直前、『吾輩は猫である』(第1冊)が刊行されていました。奥付によれば明治38年10月6日。筆者はもちろん夏目漱石。そして、中村不折が挿絵を担当しているのでした。
この日記の主の漱石・不折訪問は、たぶん、この『吾輩は猫である』出版に関わるものだったと考えられる。
いちおう、この日記の主が誰であったか、特定済み。日記の他の記事などから、漱石・不折とも、旧知の間柄だったことが判る。
そして、『漱石全集』(岩波書店版)の書簡集所収の漱石の手紙によって、この訪問の裏づけもできそうです。詳細は省きますが、この10月8日の訪問で、この日記の主は、刊行されたばかりの『吾輩は猫である』を恵与されたらしい。直後にそのお礼として、漱石にスルメを贈っているようです。猫のお礼にスルメ、と洒落ているのでしょう。――ということは、この日の訪問時点では、この日記の主はまだ『猫』を購入していないままに、漱石を訪ね、1冊もらってきた、ということでしょうか。広告などで『猫』の出版を知り、旧知の漱石を訪問したものとみえ、もしかすると、今訪問すれば、1冊もらえるかもしれない、くらいの計算があったものかもしれない。もらった『猫』を手に、その足で挿絵を担当した、やはり旧知の不折の宅に直行したことになる。

この記事だけでも、1,000円は安すぎる。古書市には、なにがころがっているかわからない。
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テーマ:古本 - ジャンル:本・雑誌

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